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【コラム】KEMOCLUBのワールドができるまで — 技術と空間設計のはなし

KEMOCLUBの顔である専用VRChatワールド。実はこのワールドは、主催であるSORAMIが「VRChatの中に自分の家を持ちたい」というところからスタートし、気づいたら「理想のダンスフロアを自分で作りたい」になっていた、という経緯で生まれました。

ワールド開発の裏側を少しだけ。

1. Unityの右も左もわからない状態からのスタート

2020年5月、Lura氏が制作したワールドアセット「VirtualComfortRoom:Edge」を購入したのがすべての始まりでした。当時はUnityの知識が皆無で、複雑に組まれたヒエラルキーを見て呆然としていました。YouTubeのチュートリアル動画を片手に、少しずつパーツを置き換え、初めて自分の手でアップロードできた時の「VRChatに不動産を持ったような感動」は今でも忘れられません。

2. リアルクラブを参考にした照明配置

「VRの中に本物のクラブ体験を作りたい」と考えたSORAMIは、noriben氏の「BeamLightShade」アセットを導入し、自力でのステージと照明システムの構築に挑みました。照明の配置や動きを研究するためにリファレンス(参考に)したのは、日本の有名クラブシーンを牽引する実在のクラブたちでした。

  • 1OAK Tokyo
  • ageHa
  • WOMB

これらのクラブのダイナミックで洗練されたライトワークをベイク(ライティング処理)するたびに、処理に3時間もかかり、失敗しては落胆する日々を繰り返しました。それでも繰り返すうちに、アニメーションで滑らかに動く照明システムがようやく形になりました。

3. なぜ「クラブだけ」の空間ではダメなのか

ワールド制作において最もこだわったのは、「綺麗な景色(スクリーンショット)を持ち帰ってもらえる空間を作る」ことでした。

カッコいいワールドは無数に存在します。もっとクオリティの高いクリエイターたちは、自分たちのアイデアを惜しみなく多くの時間をかけて作り上げています。ただ、あまりにもすべてがクラブすぎる、というのが不思議だったのです。

イベントがない間、少なくとも僕はチルワールドと呼ばれる、ゆったり過ごせる空間で過ごしています。

7時間もストイックにずっと華やかで音の大きな空間に身を置けるかといえば、そうではありません。事実として、Vol.6で作り上げたワールドは失敗ではありませんでしたが、空間としての逃げ場はありません。どこまでも暗かったせいで、イベントが終わったあともその場所にとどまる人はいません。長くとも1時間でその場を去ってしまうのです。つまり、機能的過ぎてしまうと、人々が交流するという目的すらも獲得できないまま、目当てのDJだけを見て別のワールドに移動してしまいます。

それでは、スタッフの人たちやDJも、皆フィードバックを受け取る余白がありません。なぜなら人の感想というのは、その場の一瞬の一言一言にアイデアが込められているからです。音楽だけでなく、企画、運営も含めこのあたりは非常に大きく関わります。

VRChatのクラブイベントは、単に音楽を聴くだけの場所ではありません。そこで出会った大切な友人たちと過ごし、思い出を残す場所でもあります。だからこそ、カメラを向けた時にどこを切り取っても映えるライティング、エモい雰囲気を引き立てる花火やパーティクル、参加者自身が手元で操作できるライトギミックなど、徹底的に「体験としての美しさ」を追求する必要があります。

KEMOCLUBのワールドは、手探りの技術と「VRChatで過ごす人たちに綺麗な思い出を持ち帰ってほしい」という気持ちで出来ています。これから作られる新しいワールドでも、そこは変えるつもりはありません。

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